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前橋地方裁判所高崎支部 昭和52年(ワ)230号 判決

原告

塩谷英一

被告

松岡秋雄

主文

一  被告は原告に対し、金一〇三六万二八五三円及びこれに対する昭和五〇年六月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

(申立)

一  原告は

1  被告は原告に対し、金二二一九万〇七二三円及びこれに対する昭和五〇年六月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行宣言を求めた。

二  被告は

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求めた。

(主張)

第一原告は請求原因として次のとおり主張した。

一  事故の発生

原告は左の交通事故(以下本件事故という。)によつて、後記傷害を負つた。

1 日時 昭和五〇年六月二二日午前六時三〇分ころ

2 場所 北群馬郡榛東村大字山子田一二五八番地先路上

3 加害車両 自家用普通乗用車(群五五も二七九三号)(以下本件乗用車という。)

4 被害車両 普通貨物自動車(群四四な九八一五号)(以下本件貨物車という。)

5 事故態様 原告が本件貨物車を運転して渋川方面から榛東村方面へ進行中、本件事故現場において、被告が運転してきた本件乗用車が、制限速度を遵守せず、またはみ出し禁止に違反して、対向車線を暴走したため、これと正面衝突した。

二  責任原因

被告は、本件乗用車を所有し、自己のために運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法三条により本件事故によつて原告が被つた損害につき賠償すべき責任がある。

三  傷害の部位程度

原告は、本件交通事故によつて、顔面打撲挫創、前胸部、右膝部各打撲傷、左膝部打撲挫創等の傷害を負い、同傷害が治癒した昭和五二年六月三〇日までに、右事故当日である昭和五〇年六月二二日から同年七月一二日までの二一日間関口病院に、また昭和五一年九月ころ前橋赤十字病院へ四日間各入院して治療を受けたのを始めとして、右各病院の他国立渋川病院、群馬大学附属病院等において、昭和五〇年七月一三日から右治癒に至るまでの間、通院加療を受けた。しかも、右治癒後も現在に至るまで通院加療が必要な状態で、通院を継続している。

四  損害

原告は、本件交通事故により、左記内訳1ないし6の合計金二二〇三万〇七二三円の損害を被つた。

1 治療費左の(イ)ないし(ト)の合計金九六万五九六三円、原告は

(イ) 関口病院に本件事故発生日である昭和五〇年六月二二日から同年七月一二日までの二一日間入院し、同月一三日から同年一〇月二〇日までの間に実日数において六六日通院し、さらに翌五一年三月一三日に一日通院し、その治療費として金四五万一五九〇円を

(ロ) 国立渋川病院に昭和五〇年一一月一八日から翌五一年一月二二日までの間に実日数で五七日通院し、その治療費として金六万四〇七〇円を

(ハ) 昭和五〇年七月一四日から翌五一年三月二日にかけて、川島病院、由利眼科医院、桜井病院、群馬中央総合病院へ各一日、奈良内科医院へ五日、群大附属病院へ二日通院し、その治療費として合計金三万一六六九円を

(ニ) 昭和五一年四月二〇日から翌五二年七月一五日までの間において、阿久沢健二の指圧治療を合計四回うけその代金として金一万二〇〇〇円を

(ホ) 前橋赤十字病院へ昭和五一年二月一二日から昭和五三年三月八日までの間に、四日間入院しまた実日数において一七七日通院し、その治療費として金一二万七六五五円を

(ヘ) 群馬大学附属病院へ、昭和五二年四月五日から昭和五三年一〇月二五日まで実通院日数一二一日通院し、その治療費として合計金一五万二八三四円を

(ト) その後引き続いて、右群馬大学附属病院へ通院を続け、昭和五三年一一月から昭和五五年五月までに、治療費として合計金一二万六一四五円を

各支払つた。

2 入院雑費金一万〇五〇〇円

前記入院(二一日間)中の雑費は、一日当り金五〇〇円が相当であるので、合計金一万〇五〇〇円である。

3 通院交通費合計金一九万五四四〇円

原告は、バス代として、前橋赤十字病院への昭和五一年二月から同年一〇月六日までの合計九八日の通院に一往復八〇〇円の、また同月七日から昭和五三年三月八日までの間の合計三六日の通院に一往復当り九八〇円の交通費用を支出し、また群大附属病院への昭和五二年四月五日から同年一〇月六日までの合計三九日の通院に一往復当り五六〇円の、また同月七日から昭和五三年一〇月二五日までの間の合計六七日の通院に一往復当り七〇〇円の交通費を支出し、そして右の他に右両病院へ一日で同時通院をした日が昭和五二年一〇月六日までに一一日(一日当りの交通費八二〇円)、同月七日から昭和五二年一一月までに四日(一日当りの交通費一〇〇〇円)あり、それぞれ交通費を支出した。

4 休業損害金四二〇万円

原告は、本件事故当時、青果物、乾物類等の食料品を新潟県方面に自らトラツクを運転して行商を営み、月平均一五万円相当の収入を得ていたが、本件事故による傷害のため昭和五〇年六月二二日から昭和五二年一〇月三一日まで休業せざるを得なくなつたものであるから、同期間における得べかりし収入額である合計四二〇万円(一五万×二八ケ月分)の損害を被つた。

5 後遺障害による逸失利益金八六五万八八二〇円

原告は、本件傷害によりその治癒後も下肘屈伸が、困難となつた他、記銘力低下、計算障害、換語困難、人格変化等の症状を伴う脳の機能低下及び耳鳴り、めまい、頭痛睡眠障害等の自覚症状を伴う協調運動障害、構音障害等の症状を示す神経症等の後遺障害が残存してしまつた。これにより原告は医師から自動車の運転を禁止されたばかりでなく、右脳の機能低下による痴呆状態から、就労可能領域は著しく制限される状態である。

よつて右後遺障害の程度は強制保険後遺症害等級表七級に該当することは明白であるので、就労可能年齢を六七歳とすると、労働可能年数は一一年間(昭和五二年六月当時原告は五六歳)、労働能力喪失率五六%、年間所得一八〇万円、ホフマン係数八・五九〇一となるので、その損害額は少なくとも金八六五万八八二〇円以上である。

6 慰謝料金八〇〇万円

(イ) 原告は、前記のとおり治癒までに入院合計二五日間及び昭和五〇年七月一三日から昭和五二年六月三〇日までの間の通院を要する傷害を受けたのであるから、この傷害に対する慰謝料としては金二〇〇万円が相当であり、

(ロ) また前記のとおり七級相当の後遺障害が存するのであるから、同後遺障害に対する慰謝料としては、金六〇〇万円が相当である。

五  損害の填補金一八四万円

原告は、自賠責保険から、傷害について金八〇万円、後遺障害に対し金一〇四万円の支払を受けたので、右合計金を前記損害額から控除する。

六  弁護士費用金二〇〇万円

原告は、本件訴訟の追行を弁護士である原告代理人に依頼し、判決認容額の一割を支払うことを約したので、被告の負担すべき弁護士費用は金二〇〇万円が相当である。

七  まとめ

よつて、原告は被告に対し、前記損害金の合計から前記保険金額を控除した金額に右弁護士費用を加えた金二二一九万〇七二三円及びこれに対する不法行為の日の翌日である昭和五〇年六月二三日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。

第二被告は請求原因に対する認否並びに反論として次のとおり主張した。

一  請求原因一記載の事実のうち5の事故態様は争うが、その余の事実は認める。同二記載の法的主張は争う。同三記載の事実は不知。同四記載の事実のうち4の被告の月収額は否認し、5の後遺障害等級は争い、その年収は否認し、同四の6慰謝料相当額は争い、その余の事実はすべて不知。同五記載の事実は認め、同六の記載の事実は不知。

二  原告の本件事故当時の年収は、金二〇万円である。

三  原告の本件傷害は、昭和五二年六月一四日ころ病状が固定していると考えられるので、右固定後の治療費は、右傷害とは因果関係がない。

四  原告の現在における各症状は、原告が大正一〇年二月二〇日生れであることを考えると、その年齢からして本件傷害とはすべて因果関係があるとは認められず、原告の後遺障害の等級は、一二級一二号相当である。

(証拠関係)〔略〕

理由

一  事故の発生

請求原因一記載の本件事故については、その態様を除いて当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙三、同四号証、同五号証の一ないし三、同六ないし一六号証によれば、本件事故の態様は、降雨のため路面が滑走しやすい状態のもとで、被告は本件乗用車を運転中、前方交差点手前に停止している車両を認めたのであるから、同車両の動静に十分注意して速度を減ずるなどして進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然同車両が青信号で直ちに発進するものと軽信して時速約七〇キロメートルの高速で進行した過失により、同車両後方約三〇メートルの地点に至つてこれが進行を開始しないことを認め、同車両との追突を避けるため、急制動をかけると共にハンドルを切つて進路右側に進出したが滑走したことにより、対面進行してきた原告運転の本件貨物車(ライトバン)の正面に衝突し、原告及びその同乗者一名に傷害を与えたものであることが認められる。

右事故態様によれば、本件事故は、被告の一方的過失に基づいて発生したものということができる。

二  責任原因

前掲乙一二、同一三号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件乗用車を所有し、自己のために運行の用に供していたものであることが認められるので、被告は、後記原告に生じた損害につき、自動車損害賠償保障法三条に基づきこれを賠償すべき責任があることは明らかである。

三  傷害の部位及び程度

成立に争いのない甲一ないし五号証、同六号証の一ないし一七、同七号証の一ないし六九、同八号証の一ないし三二、同九号証の一ないし九一、同一〇号証の一、二、同一一ないし一四号証、同一五号証の一ないし三、同一六号証、同一八、一九号証、同二一号証、同二五号証の一ないし六五、乙二四号証、同二六号証、同六八号証及び弁論の全趣旨により成立が認められる同一七号証の一、二並びに証人井坂健一の証言によれば、原告は、本件事故により、顔面打撲挫創、前胸部打撲傷、右膝部打撲傷、左膝部打撲挫傷(関節腔内出血)の各傷害を受け、関口病院へ右事故当日の昭和五〇年六月二二日から同年七月一二日まで二一日間入院し、その後同月一三日から同年一〇月二日まで同病院へ通院(実通院日数六六日)して治療を受けたことにより、右同日ころ、外傷については治癒したが、原告には、その後も、めまい、耳鳴り、頭重、睡眠障害、歩行障害、嗅覚低下等の自覚症状が残存したことから、原告はその後も、請求原因四1(ロ)ないし(ハ)各記載の各病院へ通院したこと、右の病院の一つである群馬大学医学部附属病院においては、原告の右自覚症状は、本件事故による頭部外傷に基づくものであり、診療所見によれば原告には健忘、換語障害、人格変化、歩行不確定、深部反射に左右差等の症状が確認され、しかも脳波には基礎律動の汎性化がみられ、軽度の脳幹部傷害がみとめられた。そこでこれらの治療を続けた結果右各症状は、昭和五二年六月末ころ固定(治癒)したが(治癒の時点については種々の診断書を存するが、原告の通院状況其他の事実に、原告を最もよく診察している右附属病院の診断を総合すると、同時点と認定するのが最も妥当である。)、なお治療の効果があるものとして、現在に至るまで、原告は右附属病院へ通院加療を受けていることが認められる。

四  損害

1  治療費

前三掲示の各証拠によれば、請求原因四の1の(イ)ないし(ト)記載の各事実が認められるので、原告は本件傷害に基づく治療費として合計金九六万五九六三円の支出を余儀なくされ、右同額の損害を被つたことが認められる。

なお被告は、原告が、本件事故による傷害が治癒した後に支出した治療費は、本件事故とは相当因果関係を欠くものである旨主張するが、治癒(症状固定)後においても、治療により患者の苦痛が緩和される限りは、その治療は、その限りで効果があり、また厳密な意味での症状固定は、定めがたい点を考え合せると、治癒後にその治療を継続のうえ支出した医療費も、特段の事情のない限り、事故と相当因果関係にあるものと考えるべきであり、本件においてもその例にもれないものである。

2  入院雑費

原告は、関口病院へ二一日間入院したことは前判示のとおりであり、その入院雑費は一日当り金五〇〇円が相当であるので原告は、入院雑費として金一万〇五〇〇円の損害を被つたことが認められる。

3  通院費用

前三において掲げた証拠及び弁論の全趣旨により成立が認められる甲二〇号証によれば、原告は、請求原因四の3記載の事実を認めることができる。同事実によれば、原告は、本件各病院への通院費用として、合計金一九万五四四〇円の金員を支出したことを認めることができる。

4  休業損害

弁論の全趣旨により成立が認められる甲一九、二〇号証、及び証人塩谷イシの証言及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、本件事故当時、青果物及び乾物類の行商を、自己の運転する車を使用して妻と共に営み、毎月の仕入額は金四〇万円前後であることが認められる。

なお原告本人尋問における供述中には、右一ケ月の仕入額は金八〇万円を下らない旨の供述があるが、これは、前認定の原告の営業形態及び成立に争いのない乙五三号証の一によつて認められる原告の申告所得額は、昭和四九年度においては、金二〇万円にすぎないことに照らし、到底措信できない。

以上の事実によれば、原告本人一人での本件事故当時の収入は、月額金八万円程度ではないかと推定される。

なおまた被告は、原告の収入は前記申告所得額通りであると認定されるべきであると主張しているが、申告所得額は、事業者においては応々少なめに申告されるのがいかんながら常態であることに鑑み、右申告の事実をもつて、前記認定は左右されない。

そして原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、原告は、本件事故日たる昭和五〇年六月二二日から、昭和五二年六月末に治癒するまで稼働できず止むを得ず休業していたことは明らかであるので、原告の休業期間は二八ケ月間と認めるのが相当である。

よつて、原告は、同期間において、金二二四万円の得べかりし収入額相当の損害を被つたことが認められる。

5  後遺障害に基づく逸失利益

前認定のとおり原告の本件傷害は、昭和五二年六月末に症状が固定したが、証人井坂健一の証言及び同証言により昭和五五年一月一八日当時における原告の頭部断層撮影の写真であることが認められる甲二三号証の一、二同証言により同じく成立が認められる同二四号証によれば、原告は、前記治癒後においても、(イ)神経症状として、右半身の軽度の麻ひ、軽度の構音障害、軽度の歩行障害が存し、(ロ)精神症状として、人格変化(自発性低下、粘着傾向、爆発生、思考迂遠等)、軽度の健忘、失語、換語障害を伴つた情動失禁、記銘力低下、著しい計算力の低下等の後遺障害が見られること、また原告の頭部の断層撮影写真においては、右各症状の原因と考えられる左頭頂葉下部に古い硬塞巣がみられ、明確な器質性変化を伴つていること、原告が従前から訴えている頭重、めまい、睡眠障害等の自覚症状は、原告の防禦反応である可能性が大であり、本人が安定すれば、消失ないし軽癒する可能性は高くまた右神経症状はごく軽いものであること、しかし右精神症状は、前記のとおり明確な脳の器質的変化に基因するもので前記性格変化、健忘とは改善が困難であること、原告は、右各症状からして自動車の運転は今後無理であること、また行商についても前記計算力の著しい低下から単独では無理であること、そして現在においては一般的稼働能力は残存しているが精神的症状のため職種は制限されることが認められる。右各認定事実に、成立に争いのない乙一七ないし二六号証、同二七号証の二、同二八ないし三一号証、同三四ないし四〇号証、同四一号証の一ないし三、同四二ないし四六号証に原告本人尋問の結果により認められる原告の前記各症状の状態における保険会社の後遺障害の査定は一二級一二号に止まつていること、原告は前記障害のもとにおいても字体の乱れはともかく、文章自体において普通の表現能力があること、原告は、昭和五三年五月ころから旅館の手伝として現実に稼働していること等の事実、加えるに証人井坂健一の証言及び成立に争いのない乙三三号証によつて認められる。原告は、本件事故当時五四歳の年齢で、やや高い血圧及びその年齢からして、脳の血管に多少硬化症状がみられることから前記脳梗塞も本件事故と一〇〇%の因果関係が存するものとまでは断ずることができないこと等の事実を重ね合わせると、原告の本件事故と相当因果関係を有する後遺障害の程度は、自賠責保険障害認定基準表九級七号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの)に相当するものと言うことができる。

なお原告本人ないし証人井坂健一の各供述中には、原告の後遺障害は現在の稼働状況からしてその程度は右基準表七級四号に該当するがごとき部分も存するが、前掲各証拠を総合すると原告の自覚症状の訴えは、診察に当つた各医師の客観的診断に比して概して誇大であると見られる点が存すること、治癒後ほとんど症状が変化していないにもかかわらず、その後約一一ケ月余りも稼働しようとしなかつたこと等が認められるので、右各供述部分をもつて、直ちに後遺障害の程度は右七級に相当するとは言えない。しかし、前記のとおり到底一二級一二号に止まるものでないことも明らかである。

以上によれば、本件事故による原告の労働能力喪失率は、三五パーセントを下ることはないと言うべきであるところ、就労可能年齢の上限を一般的に考えられている六七歳とすると原告の就労可能年数は前記治癒時から起算すると一一年間であるから、現在一時に請求するため年五分の割合による中間利息をライプニッツ式計算を用いるとライプニッツ係数(年別)は、八・三〇六四となり、原告は昭和四九年当時月額八万円(年額九六万円)を下らない収入が存したことは前認定のとおりであるので、次の計算のとおり原告の本件後遺障害に基づく逸失利益の現価は、金二七九万〇九五〇円となる。

九六万円×〇・三五×八・三〇六四=二七九万〇九五〇円

6  慰謝料

(イ)  入通院慰謝料

前記のとおり原告の入院期間は、関口病院へ二一日間、前橋赤十字病院へ四日の合計二五日であり、傷害そのものに対する慰謝料算定の基礎となる通院は、治癒までと考えることが相当であるので、前記のとおり昭和五〇年七月一三日から昭和五二年六月末日までであつて、ほぼ隔日に近い実通院日数があるところから、また前記本件事故態様等一切の事情を総合勘案するときは、右慰謝料は、金一五〇万円が相当である。

(ロ)  また前記における後遺障害に基づく慰謝料は、金三五〇万円が相当である。

よつて、以上1ないし6の損害費目の数額を合計すると金一一二〇万二八五三円である。

五  損害の填補

原告は、自賠責保険から、本件事故につき金一八四万円の支払を受けていることは当事者間に争いがないので、右金額を前記損害額から控除すると、右控除後の損害額は、金九三六万二八五三円となる。

六  弁護士費用について

弁論の全趣旨によれば、原告は、被告が任意の弁済に応じないので、弁護士である原告訴訟代理人に訴訟の追行を委任し、手数料及び成功報酬を支払う旨約していることを認めることができる。

そこで本件事故の態様、審理の経過等諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係を有するものとして被告に負担さすべき弁護士費用は、本件認容額の約一割である金一〇〇万円とするのが相当である。

七  まとめ

よつて、被告は原告に対し、第五項掲記の損害額に右弁護士費用を加えた金一〇三六万二八五三円及びこれに対する本件事故日の翌日である昭和五〇年六月二三日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるから、原告の本訴請求を右の限度で正当として認容し、その余の部分は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法九二条一項、八九条を、仮執行宣言については同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 廣田民生)

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